イラストレーター 矢野紗代子さんの「ぷらすのチカラ」
矢野 紗代子 × いろはのデザイン
地元津田沼には素敵なイラストレーターさんがいる。矢野紗代子さん。手描きのアナログにこだわり、イラストだけでなく文字も手描きで表現できるイラストレーターさんだ。文字とイラストの卓越した表現力と構成力は人に温かみを与え、見ると思わず笑みが溢れるような作品ばかり。今回、そんな矢野さんにいろはぷらすの主旨にご賛同いただき、イラストでつながる“ぷらすのチカラ”をお話いただいた。
イラストは子どもの頃から大好き
子どもの頃から、絵を描いたり文章を書くことが大好きでした。保育園の頃は、「黄色」「ピンク」「水色」の3色が大好きな子どもでした。この3色を使って、女の子やお花をひたすら描いていた、そんな記憶があります。小学校では、教科書に落書きしたり、授業のノートを取りまとめたり、交換日記をしたり…私は話すのがあまり得意ではないので、そう考えると、子どもの頃から絵を描いたり、文字を書くことで自然と人とのコミュニケーションを取っていたのかな。と感じています。
「好きなこと」が仕事になる嬉しさ
大学や専門学校で絵を学んだことは全くないのです。ただ、絵が「好き」というのはずっと続いていて、今まで勤務してきたいろいろな職場でも絵やイラストを描くことに携わってきました。
例えば、学生時代のアルバイト先だったスポーツクラブでは子ども向けスクールのチラシやポスターをたくさん描きましたし、その後就職した新聞社や鉄道会社でも、イラストが役に立ち、必要としていただけた場面がたくさんありました。
なかでも鉄道会社では、ツアーのお礼状や、手描きの鉄道のフリーペーパーを作ったり。自分も楽しくできて、周りもみんな喜んでくれるんですよね。自分のイラストが人の役に立つ嬉しさを心から感じた瞬間でもありました。
結婚後、退職してしばらくすると、知り合いの編集者さんから連絡あり、書籍のPOPを仕事として描いてもらえませんか。という依頼があったのです。個人のイラストレーターとしてお仕事をお受けするのはこれが初めてでした。当時、本当にお受けしていいのだろうか。と迷いもありましたが、先方様の「どうしても矢野さんに描いてほしい」という熱意に押されて、お引き受けしたんです。イラストもとても好評で喜んでいただき、それを見た方からまた仕事をいただき…という繰り返しで現在に至っています。
アナログのチカラ
私はパソコンでイラストを描くことはできません。ペンと紙を使って直接イラストを描いています。パソコンを使って描くことにもチャレンジしたことはありましたが、私にはどうしても馴染めませんでした。私がアナログにこだわっている理由は、(私個人の主観なのですが)、自分の描きたいイラストのイメージがダイレクトに紙面に伝わるんですよね。脳からのイメージが手に伝わり、ペンに伝わり、紙にアウトプットされる。とても単純なことなのですが、このダイレクトに伝わる感じが私にはとても心地が良いんです。自分の手で描いている瞬間は、ご依頼いただいたお客さまの思いや、このイラストを見ていただける方々を想像しながら、たくさんの人に喜んでもらいたい。という思いも込めながら一つひとつ、線を重ねていくのが大好きなんです。
文字もアナログで
私はイラスト自体はあまり上手とは思っていません。私の強みは、分かりやすく説明をしたり、自分の言葉で自分の思いを伝える、表現する。といった文章とイラストを多角的に組み合わせられることなのではと感じています。その方が描いている私も楽しいのです。ただ、構成をしているとどうしても情報量が多くなったり、文字が小さく読みにくい部分などもあるのですが、少しでも紙面を見てくださった方に思いが伝えられれば嬉しいですよね。
ここで矢野さんに印象に残っているお仕事は?と伺ったところ、今までのお仕事での作品や、原稿を見せていただきました。(以下作品)アナログの原稿版下をスキャナで読み込み、切り貼り部分の薄い境界線を潰して、印刷に仕上げていく。実は、これが印刷DTPの原点でなのである。PCが普及して文字入力や写真も簡単に配置できる。当たり前のようにデータでデザインが形成され、便利になった昨今ではあるが、それでは成し得ない、何か大切なものがこの矢野さんのイラストの原稿の中にあるのだと感じた。
この仕事だからこそ得られる経験
お仕事の依頼はいろいろです。2日間で10カットを描く超特急のお仕事や、以前鉄道会社で勤務していた際にお付き合いのあった方から、ちょうど東日本大震災の後に、「元気のある企画がやりたい」と連絡をいただき、実際に東北新幹線に乗って、その旅行記&取材を1枚の紙面にまとめる。といったお仕事もお受けしました。途中下車してお寺の階段を1000段登ったり。笑 私にとってはとてもいい思い出と経験になりました。
イラストで地元を元気に!
地元の習志野市では、谷津商店街のイラストマップや習志野市のふるさと産品手帖なども。自分の大好きな商店街や市のお仕事は、組合の方やお店の方、市役所の職員さんなどにご協力をいただき、地元の皆さんのつながりで形になったものばかりです。そして見てくださる地元の方からも喜んでいただき、そんな声が近くで感じられるのも地域のお仕事の魅力のひとつなのだと実感しました。
イラストでつなぐ「ぷらすのチカラ」
今後は教育機関に関わる仕事がしたいと思っています。たとえば私のイラストで、学校の特色や、その中で頑張っている先生たちを紹介したり、教育の現場と保護者をつなぐような媒体を作ってみたいと思っています。保護者側からすれば、大切な子どもを預けている学校のことって、意外と知っているようで知らないことが多いと思うのです。私のイラストが教育現場の中で発信の材料となり、見る保護者に安心感を与え、子どもたちが元気に楽しく成長していく。そんなポジティブサイクルが生まれ、教育の現場に「ぷらすのチカラ」となれるようなお仕事ができたら嬉しいなと思っています。
撮影協力 JoinSpot袖ヶ浦/コミュニティ・コワーキングスペース 千葉県習志野市袖ヶ浦3-5-3
習志野市の袖ヶ浦団地内にあるコミュニティ・コワーキングスペース。袖ヶ浦団地および地域活性を目的として2021年にオープン。