いろはのデザイン|千葉 東京|web・広告パンフレット企画制作

いろはぷらす +33

軒先珈琲 × まちライブラリー リノベ建築士 佐藤紘孝さんの「ぷらすのチカラ」

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佐藤紘孝 × いろはのデザイン

いろはぷらすにご賛同いただいている地域団体MAP代表の西村桂子さんからのご紹介。西村さんが誘ってくださった珈琲豆焙煎のワークショップに参加した時に、佐藤さんと初めてお会いすることができた。元々建築士の佐藤さん。軒先珈琲というビジネスモデルを作り上げ、さらに柏井(千葉市花見川区)の空き家を購入し、地域の子どもたちのために有効活用している取り組みに「いろはぷらす」で興味深いお話をたくさん伺うことができた。

軒先珈琲誕生の経緯

もともと私は自分の子どもを連れていける仕事場を作ろうと思って、建築事務所×シェアキッチンを経営しておりました。さらに、当時私のお客様で珈琲焙煎が趣味のお客様がいて、「夜に珈琲焙煎したいのでこの場所を貸してほしい」。という相談を受け、夜はシェア焙煎所として活用しておりました。
その方は本当に珈琲焙煎が趣味という方でしたので、このまま焙煎をし続けていると、いずれ消費が追いつかなくなる時期が来る。と私は感じていました。そこで、この方が作った珈琲豆を販売し、その売り上げでまた次の焙煎の資金に繋げられるようなサイクルが作れないかな。と考え始めたのが「軒先珈琲」なのです。

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オーダーを頂いてから豆を挽き、ハンドドリップでコーヒーを淹れるスタイルを貫く

軒先珈琲のコンセプトとビジネスモデル

軒先珈琲は、空き店舗や空き家、行政の持っている公共施設や道路、河川、海辺、公園などでポップアップ店舗として小さな珈琲屋を出店し、地域の皆さんと対話できる場を作る。というのがコンセプトです。また行政の場を使って出店する場合は社会実験的な要素も兼ね備えた取り組みです。
現在(取材時:2023年9月)は常時3~4名が軒先珈琲のポップアップ店舗として稼働しています。軒先珈琲のビジネスモデルは自分の隙間時間で無理なく働けることが最大の特徴で、主婦や仕事を持っている方でも週末や土日の空いた時間を自由に活動できます。もちろん店舗管理や賃料などもありませんから、少ない先行投資でリスクも最小限に抑えられます。
また、ある程度出店のペース配分をつかめば、月に3~4万程度の収益があげられるサイドビジネスなのです。そして何より、地域の人との「会話」が生まれます。コーヒーを淹れる人、飲んでいただく人それぞれが新しい出会いや、コーヒーを通じて会話が生まれ、仲間ができる。殺伐とした時代と言われる昨今、このようなアナログ的な接点で人が繋がることって、収益以上の財産になると私は感じています。

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軒先珈琲のポップアップ店舗 限られた先行投資で運用できるサイドビジネスが強み

千葉市との関わり

2016年、軒先珈琲としての初めての活動が千葉市民活動フェスタのイベントに出店しました。そのようなイベントに出店を重ねていく中で、「千葉市まちづくり未来研究所:市民シンクタンク研究員」に選ばれ、市民が行政の政策を考える会があり、そこに私が参加したんです。
その時に、千葉市の海辺でのイベントで「検見川ビーチフェスタ」というイベントがあり、ここで来場市民からアンケートをとりたいので、軒先珈琲を出店してほしいと言われたのです。
具体的には、行政所有の海辺の活用や、来場者との対話の場を作るために、コーヒーを飲みながらコミュニケーションし、来場者からアンケートを取っていくというイベント内容でした。これが軒先珈琲として行政に関わった最初の取り組みでした。

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行政との繋がりも強い軒先珈琲 今回は千葉市役所内のフェアトレードマーケットに出店

フェアトレードと軒先珈琲

千葉市はフェアトレードを推進している都市です。千葉市が考えるフェアトレードとは、海外の途上国から適正価格で仕入れる。というものはもちろん、市や地域の障がい者施設で作られた物品や地域の人が活動しているものを積極的に取り入れましょう。といった考え方が千葉市の「フェアトレード」なのです。そんな千葉市から、フェアトレードの珈琲豆を監修する依頼を受けました。千葉市が取り組む「地域レベルでのフェアトレード」の考え方は地域との出会いや繋がりをコンセプトとしている軒先珈琲としてとても共感を受けました。そこでこの依頼を受け、以降、軒先珈琲が本格的にフェアトレードの珈琲豆と関わるようになったきっかけにもなりました。
珈琲豆は自分で仕入れて自分で焙煎する。というのが本来利益率も高くなります。わざわざ人が焙煎した珈琲豆や、コストの高いフェアトレードの珈琲豆を使うことはありませんが、軒先珈琲ではフェアトレードの珈琲豆はもちろん、様々な珈琲豆を取り扱い柔軟に運営しています。

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軒先珈琲で販売しているフェアトレードコーヒー豆
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この日はペルー産のコーヒーをいただくことに

ミライの子どもたちへの教材に

さらに行政との関わり合いの中で、市長とのランチミーティングに参加した時、軒先珈琲のビジネスモデルやコンセプトをプレゼンテーションしました。その時に、市長から「中学生向けの起業講座」として開いてみては?というご提案をいただき、2019年に千葉市とコラボし「カフェショップの起業講座」として実現したのです。
軒先珈琲のコンセプトやビジネスモデルがミライの子どもたちの教育の題材としても活用されたのです。子どもたちの「やってみよう」という思いを軒先珈琲を通じて分かりやすくカタチにできた講座で、行政や私たち自身にとっても価値ある講座となりました。

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小さなビジネスモデルだからこそ起業講座としては最適な教材だ

コーヒーを取り巻く新たな取り組み

2021年に千葉市花見川区の地域活性化支援事業で軒先珈琲として出願し、採択されたのですが、その時「空き家バンクと空き地マルシェ」という事業内容で出願いたしました。空き家や空き地、空き店舗や公共空間を今後どうしていこうか。という考え方を軒先珈琲でコーヒーを飲みながら広めていきたいといった内容でした。また私は「空き家バンクを作りたい」という思いもあって空き家の相談窓口もはじめました。
その時に花見川区の柏井で、空き家を売りたい方と繋がり、軒先珈琲としてその空き家を買い上げ、珈琲を含めた新しい運用が始まりました。

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一杯のコーヒーから空き家バンクへ展開する軒先珈琲 そこにはしっかりしたビジョンがある

思いがカタチになる

私は子どもが好きで、この空き家を子どものために使いたいと考えました。テーマは「子どもを通じた福祉」。いわゆる子どもが中心となり、そこに子どものコミュニティができる。それは学童や寺子屋、子ども食堂だったり、さらにその親や地域の人や年配者が集まり、繋がって地域一体となり子どもたちのために何かできる場を、空き家や空き店舗を利用して作りたいと思いました。現在(取材時:2023年9月)は2Fを焙煎所、1Fを子どものための空間や、コミュニティスペースとして活用しています。

これからの軒先珈琲

今後は私たちがイベントに出店するときに、「空き家相談」としての告知もしていき、世の中にある空き家の利用価値を子どもや子どもに通じた福祉に使っていただく、そのお手伝いができたらいいなと思っています。私の本業は建築士なので、空き家の状態で改修や解体などの判断もできます。軒先珈琲のコーヒーを飲みながら気軽に相談いただけると嬉しいですね。
そしてゆくゆくは、空き家バンクの枠組みを固め、飲食を伴った多角的な運営ができる提案や、地域のNPO法人(NPO法人PeCoまんまぁる:代表 高尾晃子さん)と一緒に介護や福祉を絡めた空き家の有効活用を一緒に進めていきたいと考えています。
また、もちろんこの空き家バンクの取り組みの根底にある「軒先珈琲」の活動として、例えば地域のお母さんたちでも気軽に珈琲を淹れられる。そんな人たちを増やしていきたいですね。軒先珈琲を地域に根付かせ、地域全体が会話と活気がある街にしていきたいと考えています。

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イベント出店時における実際の空き家相談用のPOP コーヒーを飲みながら気軽に話してもらえればと、代表の佐藤さん

【編集後記】
取材時2023年は千葉県誕生150周年。軒先珈琲は、同県の記念事業の一環である観光ツーリズムや千葉土産、移住促進フェアの3つの事業にも参画しているそうだ。フェアトレードのコーヒー豆やオリジナルタンブラーを千葉土産として販売、空き家の使い方を広げ、千葉に観光に来たときに、空き家のツーリズムを行い、観光客ににも空き家の存在とその可能性を伝え、移住促進に繋げようといった試みだ。珈琲1杯を売る小さな軒先珈琲のポップアップ店舗から空き家バンクや子どもたちの居場所づくりを実現したり、さらに行政と組んだ観光誘致や移住支援にまで取り組む佐藤さん。多角的な展開を見せる今後の軒先珈琲がどんな化学反応で変化していくか楽しみだ。

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タンブラーを中心にさまざまな記念グッズも販売
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【関連リンク】
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